電気代を補助する負担軽減策とは?補助の対象や値引き金額の確認方法
今回は、電気代を補助する負担軽減策の目的や内容、負担軽減策による電気代・ガス代の値引き金額について解説します。電気代が変動する主な要因もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
電気料金が上昇する原因
ここ数年間、電気料金の高騰についての話題がよくニュースで報じられています。そもそも、なぜ電気料金は上昇しているのでしょうか。まずは、電気料金が上昇する主な2つの原因を見ていきます。
国際情勢の影響
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナへの軍事侵攻 を発端に、国際情勢は大きく変化しました。そこで、私たちの生活に直接的に影響を与えるのが燃料費の高騰です。日本はエネルギーの9割近くを輸入 に頼っており、LNG(液化天然ガス)をはじめとする火力発電燃料の価格高騰には、大きな影響を受けてしまうのです。
発電に使用する燃料の仕入価格が高騰すれば、電力会社の収益は圧迫されることになります。そのため、日本の電力会社は、燃料費の上昇分を「燃料費調整額」として月々の電気代に反映させる仕組みを導入しています。国際情勢の影響により、この燃料費調整額が上乗せされたことが電気料金の上昇を招いたのです。
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円安による燃料の輸入価格の上昇
電気料金の上昇には、円安も深く関わっています。前述のとおり、日本はエネルギー資源の大半を輸入に頼っているのが実情です。しかし、円安が進行すると外貨に対する円の価値は相対的に下がるため、従来と同じ量の燃料を輸入するにはより多くの円を支払わなければなりません。結果として燃料の輸入価格は上昇し、電力会社の収益を圧迫する要因のひとつとなってしまっているのです。
このように、国際情勢の変化に加えて円安が進行したことにより、多くの電力会社は電気料金の値上げに踏み切らざるをえない状況に陥りました。電気料金の値上げは、電力事業を継続するために各電力会社が講じた苦肉の策だったともいえます。
電気代・ガス代負担軽減策の目的
電気やガス料金の急激な上昇は、私たちの暮らしに多大な影響を与えます。各家庭に請求される電気代・ガス代が高くなるだけでなく、私たちの暮らしを支えるあらゆる産業も電気やガスをエネルギー源として営まれているからです。
例えば、スーパーマーケットに並んでいる食料品は、国内外の各地から流通網を通じて配送されています。商品を保管する倉庫にかかる電気代、輸送時のトラックにかかるガソリン代など、流通はあらゆる箇所で燃料費の影響を受けます。電気代・ガス代が際限なく上昇するようでは、私たちの暮らしそのものが成り立たなくなってしまうおそれもあるのです。
そこで政府は、令和4年度第2次補正予算 に「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策 」として約30兆円を計上。そのうち、「電気・ガス価格激変緩和対策」として、電気・都市ガス料金の負担を軽減するために約3兆円 の予算を計上しています。
電気代・ガス代の高騰によって打撃を受ける企業や家庭の負担を軽減し、安定的な国民生活を維持することがこの負担軽減策の主な目的です。
電気代・ガス代の負担軽減策の内容
電気代・ガス代の負担軽減策とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。補助の対象者や適用される期間、値引き金額の確認方法などを整理しておきましょう。
電気代・ガス代補助の対象者
電気代・ガス代補助の対象者は、電気・ガスの利用者すべてです。具体的には、家庭や企業などに請求される電気代・ガス代から、小売事業者が料金を値引きすることで支払金額の負担が軽減されます。
一方、国は電気・ガスの小売事業者に対して、値引き原資を支援します。この原資を活用することにより、小売事業者は利用者に請求する電気代・ガス代から値引きが可能になるのです。
なお、値引きは小売業者からの請求時に適用されるため、電気代・ガス代の補助を受けるにあたって、利用者が申請手続きなどを行う必要はありません。
補助は2024年4月まで延長予定
電気代・ガス代補助は2023年1月から始まり、当初は同年9月使用分(10月検針分)で終了となる予定でした。
しかしその後、補助期間が見直されたことにより、2024年4月まで延長される予定です。5月以降は補助金を縮小しながらも、引き続き補助は継続するとも発表されています。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「電気、ガス、ガソリンへの負担軽減策を引き続き実施します。」
補助による値引き金額の確認方法
補助によって実際にどれだけ電気代・ガス代が値引きされているのか、気になっていた方もいるのではないでしょうか。補助による値引き金額は、電気代やガス代の請求書や検針票、WEB明細、契約している電力会社・ガス会社のWEBサイトなどで確認可能です。
電力会社・ガス会社によっては、あらかじめ値引きされた金額で従量料金が算出されているケースもあります。なお、その場合も、値引きに関する但し書きなどが記載されている場合が多いため、請求書や検針票の項目をチェックしてみてください。
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負担軽減策の対象となる電力会社・ガス会社
負担軽減策の対象となる電力会社・ガス会社は、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の申請手続きを経て、採択された事業者です。大手電力・ガス会社だけでなく、電気・ガスの自由化以降に参入した新電力・ガス会社も対象となります。
負担軽減策の対象となっているすべての電力会社・ガス会社は、経済産業省資源エネルギー庁の特設サイトで確認できます。
現在契約している電力会社・ガス会社が負担軽減策の対象となっているか気になる方は、経済産業省資源エネルギー庁の「電気・ガス価格激変緩和対策事業に参加し、値引きを行っている電気・都市ガスの小売事業者などの一覧」で事業者名を検索・確認してみましょう。
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負担軽減策による電気代・ガス代の値引き金額
負担軽減策によって、私たちの電気代・ガス代はどれくらい値引きされているのでしょうか。具体的な値引き金額は下記のとおりです。
契約区分 | 2023年1~8月使用分 | 2023年9月~2024年4月使用分 | |
---|---|---|---|
電気代 | 低圧契約(主に一般家庭) | 7円/kWh | 3.5円/kWh |
高圧契約(主に企業) | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | |
ガス代 | 一般家庭 | 30円/㎥ | 15円/㎥ |
企業 | 30円/㎥ | 15円/㎥ |
なお、電気代・ガス代の補助延長により、値引き金額が変更されている点には注意してください。2023年8月までの使用分、そして2023年9月以降の使用分では、値引き金額が半分になっています。
一例として、一般家庭(低圧契約)で月300kWhの電気を使用していると仮定した場合、2023年1~8月の値引き金額は2,100円/月、2023年9月~2024年4月の値引き金額は1,050円/月です。
また、ガスを月30m3使用した場合、2023年1~8月の値引き金額は900円/月、2023年9月~2024年4月の値引き金額は450円/月となります。
電気・ガス価格激変緩和対策事業以外の補助金
ここまでご紹介してきた電気・ガス価格激変緩和対策事業は国による事業ですが、ほかにも電気代・ガス代に関する補助金制度が用意されているケースはあります。地方自治体や電力会社による独自の補助金の例を見ていきましょう。
沖縄電気料金高騰緊急対策事業
沖縄県と一般社団法人沖縄県経営者協会は、2023年6月より「沖縄電気料金高騰緊急対策事業」を実施しています。これは、国による電気・ガス価格激変緩和対策事業の補助金に加え、電気代を値引きする仕組みです。具体的には、下記の金額が電気代から値引きされます。
区分 | 2023年6~8月使用分 | 2023年9月~2024年5月使用分 |
---|---|---|
低圧契約 | 3円/kWh | 1.5円/kWh |
高圧契約 | 2.3円/kWh | 1.2円/kWh |
こちらは国による補助金と同様に、契約している電力会社が申請手続きを行い採択されていれば、利用者が特に申請手続きなどを行う必要はありません。
※沖縄県商工労働部一般社団法人沖縄県経営者協会「電気料金の値上げの決定に伴う独自支援の開始について」
中部電力ミライズ独自の負担軽減策
中部電力ミライズでは、独自の負担軽減策を講じています。主に企業向けとなりますが、電気の特別高圧・高圧契約については、2023年6月~2024年2月使用分の電気代が2.09円/kWh割引される負担軽減策の実施を決定しました。
中部電力ミライズ「電気料金等の負担軽減策の継続および拡充」
2023年の大手電力会社の値上げ率
負担軽減策が実施される一方で、2023年には大手電力会社10社のうち7社が規制料金の値上げに踏み切りました。値上げ後の料金は2023年6月使用分より適用されています。具体的な値上げ率は下記のとおりです。
電力会社 | 値上げ率 |
---|---|
北海道電力 | 約21% |
東北電力 | 約24% |
東京電力エナジーパートナー | 約14% |
北陸電力 | 約42% |
中国電力 | 約29% |
四国電力 | 約25% |
沖縄電力 | 約38% |
負担軽減策が実施されたにもかかわらず電力会社はなぜ値上げをしたのか、疑問に感じた方もいるでしょう。規制料金とは、電気代を値上げする際に国の認可が必要な料金体系のことを指します。
電力会社が自由に決められる電気料金である自由料金に対して、規制料金については一定以上の値上げをする際には電力会社が国に申請しなければなりません。
上記のような値上げに至ったのは、各電力会社が国に値上げの申請を行ったのが負担軽減策の発表よりも前だったからです。結果的に、負担軽減策が実施される一方で、電気代が値上げされることになったのです。
電気代の主な変動要素
電気代が変動する主な要因としては、燃料の供給価格による影響と再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の低下や上昇が挙げられます。それぞれが電気代の変動につながる理由を見ていきましょう。
LNG・原油・石炭の供給価格による影響
日本の電力を支える火力発電は、LNG・原油・石炭といった燃料によってまかなわれています。いずれの燃料もほぼすべてを輸入に頼っていることから、国際情勢や為替レートによって燃料価格が高騰すると電気代が上がる直接的な原因となります。
近年の国際情勢において、特に燃料価格に顕著な影響を与えたのがロシアによるウクライナ侵攻です。ロシアのLNG輸出量は世界有数 です。欧州やG7は、省エネや石炭火力・原子力の活用などを進めてロシア産エネルギーからの脱却を目指す一方で、LNG輸入を急速に拡大しています。
今やLNGは世界的な争奪戦となっており、需要に対する生産能力が追いついていない状況といえます。電気代は日本国内の情勢だけでなく、世界情勢の影響を強く受けているのです。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2023について」
再生可能エネルギー発電促進賦課金の低下
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって電力会社が買取りに費やした費用の一部を、電気の利用者に使用量に応じて負担してもらうための賦課金です。電気を契約しているすべての利用者が支払うことになっているため、再生可能エネルギー発電促進賦課金が増えれば実質的に電気代が値上がりすることになります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金は2017年7月に導入されて以降、上昇の一途をたどってきました。2022年の再生可能エネルギー発電促進賦課金は3.45円/kWh であり、制度のスタート当時から約15.7倍に増加しています。
一方、2023年には1.40円/kWhと2022年の半分以下 に減りました。再生可能エネルギー発電促進賦課金は基本的に再生可能エネルギーによる電力の市場価格が安いと上昇し、高いと下落するという仕組みになっています。再生可能エネルギー発電促進賦課金の低下は、近年の電気代がやや落ち着きつつある要因のひとつと考えられるでしょう。
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電気代の補助にまつわるよくある質問をQ&Aにまとめました。疑問点や不明点の解消に役立ててください。
Q. 電気代・ガス代の負担軽減策とは、どのようなものですか?
電気代・ガス代の負担軽減策とは、国が電気・ガスの小売事業者に対して値引き原資を支援し、この原資を利用して小売事業者が利用者への電気代・ガス代を値引きするという仕組みのことです。値引きは請求時に適用されるため、電気やガスの契約者が事前に申請手続きなどを行う必要はありません。
電気代・ガス代の負担軽減策は2023年1月から始まり、当初は同年9月使用分(10月検針分)で終了する予定でした。しかし、燃料費が依然として高い水準にあるため、2024年4月まで延長されることが決定し、5月以降も補助金の縮小はありつつも、補助は継続すると発表されています。
Q. 負担軽減策によって電気代やガス代はどの程度値引きされているのですか?
負担軽減策による電気代の値引き金額は低圧契約で3.5円/kWh、高圧契約で1.8円/kWhです。ガス代については、1m3あたり15円値引きされます(いずれも2023年9月~2024年4月使用分までの値引き金額)。
一例として、月の使用料が電気300kWh、ガス30m3の家庭では、1ヵ月あたりの電気代が1,050円、ガス代が450円値引きされることになります。
【まとめ】電気とガスはセットプランで効率良く節約を
国による電気代・ガス代の負担軽減策は2024年4月までの措置です。2024年5月以降も補助そのものは継続すると発表されているものの、現状と同等の値引きが継続されるという保証はありません。電気代やガス代は国際情勢や円安などの影響を受けて変動するため、光熱費の節約については検討しておく必要があるでしょう。
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